至福

夜、いつものマッサージ屋をのぞいたら、受付に「マサムネくん」発見。
もう、それだけで舞い上がる私。

大のお気に入りなのに、悲しいかな、なかなか彼に当たらない。
あいかわらず指名ができない私は、偶然に期待するしかないのだ。

店内は空いていて、他のスタッフも手持ちぶさただったけど、
ゼッタイにマサムネくんが担当してくれるに違いない!
と信じて、フンパツ60分コースをオーダー。

願いは叶い、
「準備しますので、すこしおまちくださいね」
と例の消え入るような声でマサムネくんがささやく。

う、うれしい…。

ベッドにうつぶせになって、マッサージが始まるのを待つ間、
うれしさのあまり、自分がニヤけていることに気づいた。

自分の挙動のあやしさに一瞬動揺したが、
「ええい、どうせ誰にも見えないんだし!」
と、よろこびあらわに思い切りニヤけることにした。

ひゃほーッ!これから60分、マサムネくんひとりじめ!

今日もあいかわらずマッサージは力強く、
ツボのあたり具合もバッチリ。
でも、あいかわらず声はか細い。

足ツボ刺激で足裏をゴリゴリ、眼精疲労回復でホッペをムギュッと。
あぁ、何度やられても(マサムネくんだと)恥ずかしい。

マッサージ後は、「ぬるま湯ですよね」と紙コップを差し出してくれる。
マサムネくん、私の好みをちゃんとわかってくれてるのね…。

いや、この店のスタッフは全員、私がマッサージ後に
「お水はぬるめで…」と頼むのを知ってるのだが、
マサムネくんに言われると、なぜかミョーにうれしい。

店長さんに
「今日はいらっしゃらないのかな?と思ってたんですよ」と言われ、
「そんなことまでチェックしないでくれよー」な気分になるも、
マサムネくんがいる限りは、今日みたいな至福のひとときを期待して
やっぱり毎週通い続けちゃうのである。

もちろん、毎回指名する手もあるけれど、
たまーに当たるからこそ、よろこびひとしおなのだ。

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